東京みどりの食料システムEXPOロゴ

東京開催

会期2025年311日(火)~14日(金)10:00~17:00(最終日は16:30まで)

会場東京ビッグサイト MAP

都市農業の革新「清瀬ベジフルパーティ」東京の
持続可能な未来への挑戦

東京都清瀬市

関ファーム

関 健一 さん

■ 都市農業の課題
東京の農林水産業は、東京都に暮らす人や、世界中から訪れる観光客向けの食事と密接に結びつき、その多様な需要をまかなうため、新鮮でバラエティに富んだ産物を数多く産出しています。
また、東京都は400 年以上の歴史のある農家が多く、関東ローム層の肥沃な土地で、近くに川が流れる平地は農地としても魅力的で、家業の農業を引き継ぎ、やる気のある生産者が多くいます。

しかし、東京は約1,400万人が住んでおり、その食料消費と比べてしまうと東京都の生産の割合はごくわずかで、自給率(カロリーベース)は1%以下で、これ以上減らすわけにはいきません。
今回は、都市農業の生産者で、清瀬ベジフルパーティなどの生産者仲間と一緒に、持続可能な未来に向けて、新しい挑戦をしている生産者、関健一さんにインタビューをしました。農林水産省全国優良企業経営体表彰において、優秀と認められた生産者で、東京都GAP、東京都エコ農産物認証を取得しています。

東京都清瀬市は、池袋から電車で30分の距離にあり、水と緑に恵まれた豊かな自然環境が広がっています。
清瀬ベジフルパーティーは、東京都清瀬市の若手農家が集まる出荷組合です。
彼らはベジタブルとフルーツのプロフェッショナルであり、高品質で鮮度の良い農作物を出荷しています。
このグループは東京野菜の都産都消を推進し、物流の距離を短縮することでCO2排出を減らすなど、都民が食べる東京野菜で環境保全を推進しています。
清瀬ベジフルパーティ

■ 新しい生産技術を取り入れ、栽培方法を進化させていく
代表の関健一さんは、トマト、水菜、なす、ルッコラなどを栽培し、JA直売所や、都心の高級スーパーなどへ販売をしています。特に、トマトの栽培に情熱を注いでいます。

関ファームでは効率的な温室を利用して、高品質なトマトを生産しています。トマト栽培は究極の花芽分化を追求し、大玉で24段、ミニトマト30段以上収穫ができ、10ヶ月間休みなく収穫できる方法を確立しています。

また、養液栽培の手法を用いて、オランダの農業手法に迫る生産性とおいしさを実現しています。
ハウス内にはパソコンが設置されていて、室内環境、窓、炭酸ガス、遮光ネットなどの状態が制御され、時系列でグラフ化されて一目でわかるようになっています。さらに、日射比例潅水もセンサで調整されています。

関さんが行っている養液栽培のトマト栽培は、世界の輸出量の1位2位を争っているオランダで始まった農業手法です。
オランダは九州と同程度の国土にも関わらず、農業の輸出国であり、東京の農家でも、おいしく、効率的に農業を続けられる方法があると知った関さんは、国内で養液栽培がまだあまり普及してなかった約10年前、新幹線で遠方まで足を運び、実際に養液栽培を行っている生産者から学び、資材やシステムを購入、トマトが育つ環境を細やかな栽培技術を採用しながら、自分たちに合う方法になるよう研究会で勉強をしてきました。
また、5年前に始めた東京養液栽培研究会は、現在30数名のグループに成長。
日本野菜ソムリエ協会の第2回全国ミニトマト選手権で最高金賞を受賞した東京都府中市澤井さん「さわとまと」も東京養液栽培研究会の会員で、共に研究を重ねながら、切磋琢磨しています。

■ 販路開拓、物流、商流の新しい取り組み
関家の先祖は400年以上、この土地で農業を続けています。
水菜栽培のパイオニアと言われた関健一さんのお父様から受け継いだ水菜は、おいしいと評判でスーパーから指名買いがあるほどです。
しかしお父様が亡くなった際に相続税対策で農地が減少。都会の生産者は相続のたびに農地が少なくなり、さらに最近は人件費や資材の高騰により、農業を取り巻く環境は厳しさを増しています。
丹精込めて作った野菜でも、市場に出すと原価を下回る価格で買い叩かれてしまうため、消費者の意識改革や、国の制度として、最低価格を保証できないかと、訴えています。
一方で、関ファームでは清瀬ベジフルパーティ、東京みらい農業協同組合清瀬市店と協力して、農産品の価値を理解してくださる消費者や、スーパーのバイヤーに直接届けられるように、直売所での販売、ホームページで農産品を紹介する他、グループで都心部への販路を開拓しています。また、東京都は、令和5年度から東京産農産物流通促進事業をスタート。
この事業により、清瀬ベジフルパーティの農産品は豊洲市場の定松を経由して、都心の百貨店や、一流ホテルに鮮度よく週3 回配送できる物流、商流ができました。
令和6年1月、清瀬ベジフルパーティの生産者は、東京ステーションホテルで、清瀬ベジフルパーティの野菜で作られた石原総料理長が作るオリジナルのコース料理を頂く食事会がありました。
食事をしながら、意見交換交流し、ディスカッションをしていく取り組みが、生産者や料理人の励みになり、東京都の持続可能な農業と、一流ホテルの美味しい料理提供につながっています。

■ 東京で食べるなら、東京のトマトが一番美味しいと思う。
地産地消で食べてもらえるトマトはカーボンニュートラルになります。
清瀬ベジフルパーティーの生産者は、軒先の自販機に商品を入れ、近隣の消費者が歩いて買いに来てくれる仕組みを構築しています。
SDGs な取り組みとして「都産都消」を掲げるスーパーのバイヤーにも共感されており、都心の高級スーパーや百貨店でも販売されています。
また、6次産業化にも積極的に取り組んでいます。生産者だから作ることのできる無塩無添加で仕上げた特別なトマトジュースは人気です。


関ファーム直売所

COCO TOMATO JUICE

次の世代に農業を引き継いでもらえるよう、関さんは大好きなトマト栽培で、ご自身の事業規模で損益分岐点を超えるような仕組みを考え、科学的に栽培を管理すると同時に、経営者として人材育成や、地域の仲間との課題解決にも取り組み、事業を営んでいる具体的なお話を聞かせてくださいました。
このような都市農業の取り組みは、持続可能な食のバリューチェーンを築き、地産地消を推進する上で重要です。関さんの経験と知識は、共に活動する仲間の農家や消費者にも共有されていて、新たな価値を創造しながら、楽しくワクワクするような未来が見えてきました。

記事:石川史子 写真:山根正允