東京みどりの食料システムEXPOロゴ

東京開催

会期2025年311日(火)~14日(金)10:00~17:00(最終日は16:30まで)

会場東京ビッグサイト MAP

競合の垣根を越え、
食品ロス削減で連携
(株式会社セブン&アイ・フードシステムズ中上冨之氏)

2024年7月29日環境啓発イベント「mottECOフェスタ2024」がホテルメトロポリタンエドモンドで開催されました。

「食品ロス・食品廃棄物削減」という社会課題について、競合の垣根を超えた複数の事業者、省庁、自治体、大学が連携して「mottECO」*(モッテコ)導入と拡大を通じて社会課題の解決を図りながら、消費行動の変容を目指す目的で約50名が参加しました。

*「mottECO」とは飲食店で食べ切れなかった料理を、自分の責任で持ち帰るという、環境省、農水省、消費者庁が推奨するフードロス削減の取り組みです。この取り組みを推進する「mottECO普及コンソーシアム」では、「ロゴ入りの持ち帰り用容器(環境配慮素材製品)」や「注意喚起のチラシ」などの統一フォーマットを作り、仲間を増やしています。

 イベントは、食品ロスの削減や地産地消の推進、省エネルギーやリサイクルの取り組みなど、持続可能な社会を作るための取り組み事例を紹介する展示ブースや3つの講演会、パネルディスカッション、試食コーナー等、盛りだくさんの内容でした。

 mottECO普及コンソーシアム主催者を代表して、株式会社セブン&アイ・フードシステムズの中上冨之さんに話を伺いました。(以下、文中団体敬称略)

1.mottECO普及コンソーシアム、スタートの経緯:

 2019年10月、「食品ロス削減推進法」が施行されことをきっかけに、デニーズの店舗から排出される食品廃棄物の組成分析を実施した結果、大きくは厨房由来、客席由来、コーヒーかす、に分かれていることが確認できました。
 このうち厨房由来の食品廃棄については、自動発注の導入、食材保管や調理工程の見直しなどの企業努力で大きく削減することができました。またコーヒーかすについては、コーヒーを売れば売るほど増えていき、削減することができない廃棄物のため、早くからリサイクルに取り組んでいました。
 今後、飲食事業者が店舗からの食品廃棄物を減らすには、お客様の消費行動変容を促し、まずは食べ残しを減らすこと、その先で「止むを得ず食べ残された料理の持ち帰り」に取り組むしかないと考えました。
 同じ頃、気候災害により、あるデニーズ店舗の撤退を余儀なくされたことで、環境対策は単なるコストではなく、企業リスク低減施策としてできることから推進していく必要性を強く感じていたタイミングでもありました。
 外食産業の市場規模は全体では25兆円と大きいのですが、1番大きな企業でも、ようやく1兆円に達するかどうかで、個別にはまだまだ発信力が弱く、1社だけでは世論を動かすことができません。そこで、パートナーシップによる活動を推進していくことが、目標に近づく最善の方法と考え、2021年、デニーズと同業態のロイヤルホストを経営するロイヤルホールディングスと連携し、国の公募で決定した食べ残し持ち帰りの名称「mottECO」を使用した取り組みを始めました。
 その後、継続的に仲間を増やしながら活動を推進、2023年度には「食品ロス削減推進表彰環境大臣賞」を受賞しました。これは組織の枠を越えて連携し食品ロス削減に取り組む、全国でも例のないアライアンスである点が評価されました。4年目の今年は、さらにパートナーが増え、産官学の21団体が連携して活動しています。
・21年度(R3):デニーズ・ロイヤルホストの外食2社連携でmottECOスタート
・22年度(R4):和食さと、日本ホテルが加わり、4社連携でコンソーシアム設立
・23年度(R5):びっくりドンキー、京王プラザホテルと杉並区を加えた官民7団体に拡大
・24年度(R6):外食8社、ホテル8社、中食1社、自治体2、大学2:産官学民21団体連携

2. 成果

 私たちは、mottECO事業を切り口に 「食べ残しをしない」「止むを得ず食べ残したものは、自分の責任で持ち帰り、ごみにしない」 という消費行動が当たり前の社会を目指しています。
 本事業の食品廃棄物削減成果として、スタートした2021年度末126店舗9.4tから徐々に増え、2024年度末には実施1,200店舗以上、削減81.0t以上を計画しています。
 農林水産省が掲げた、2030年度までに事業系食品ロスを半減(2000年度比:547万t→273万t)させるという目標達成に、数字的にはまだまだ微々たるものですが、その潮流作りの面で、ほんの少し貢献することができたのではないか、と考えています。

(参考)農林水産省 令和4年度の事業系食品ロス量が2030年の削減目標を達成!
https://www.maff.go.jp/j/press/shokuhin/recycle/240621.html

3. 一次産業との連携

・規格外の野菜

 規格外の野菜の廃棄は、世の中に発表される食品ロス量に入っていません。mottECO事業で連携しているホテル日航つくばに情報をいただき、同じくコンソーシアムメンバーである東京農大の先生と一緒に、規格外野菜の消費に取り組まれている農家の方々の話を聴く機会を得ました。弊社社長にその内容を報告したところ、自分もぜひそうした場に連れて行って欲しいと言われ、茨城のレンコン農家を訪ねました。、こうした、現場で学ぶ体験が規格外野菜の使用ルートの開拓につながっています。形が悪いというだけで市場に出ない食品が廃棄されている、という現実には大きな課題感があります。食事を提供する側が生産者を守る意識で仕入れて、しかも供給を維持するという仕組み作りが飲食事業者に求められていると思います。


規格外の野菜

・山梨県と環境包括連携 環境配慮素材認証*の推進

 弊社は山梨県及び北杜市と協定を結び、2021年より北杜市内の手入れされていない山に「セブン&アイ・フードシステムズの森」づくりを進めています。
 山梨県は県土の78%を森林が占め、そのうち46%に当たる14万3000haが環境配慮素材認証林です。県との連携の一環で、材木を生産する際に出てくる端材を有効利用できないかと考え、木製SDGsバッチを2,000個製造、全社員に配布しました。これは自社のSDGsの取り組みを、形として社員に認知してもらうという社内啓発の目的もあります。
 またこのバッチは山梨県内の福祉施設で作っていただいており、地元の障がい者雇用につながっています。
 本社に届いたバッチの段ボールを開けると、「おしごとくださり、ありがとうございます。いっしょうけんめいつくりました」と手紙が同封されていて感動しました。

*環境配慮素材認証とは
森林管理団体が持続可能な森林管理を実施していることを第三者機関によって認証し、その木材や製品に環境配慮素材であることを証明するロゴマークを付けることで、消費者に伝える仕組みです。環境配慮素材認証は、森林の生態系や生物多様性、住民の権利や福祉、法律や規制などを考慮した基準に基づいて行われています。

4. 啓発活動を通じた今後のビジョンについて

 食品ロス削減の取り組みをさらに拡大し、多くの人や組織に参加してもらうことが重要だと考えています。特に、外食産業は、出店している地域のリサイクルや、廃棄物処理などの課題について、地域行政と一緒に課題解決に取り組んでいく必要があると考えています。コンソーシアムでは、食品ロス削減の意義を伝えるとともに、具体的なソリューションの提供や成功事例の紹介をしていきます。また、mottECOの認知度を高めるために、食べ残しの持ち帰りに関する食品衛生ガイドラインについて、厚生労働省、及び消費者庁と検討していますので、関心を持って頂ける皆さまはぜひお声がけください。一緒に食品ロス削減に取り組みましょう。

最後に、「mottECOフェスタ2024」の基調講演で、弊社小松社長が紹介したグテーレス国連事務総長の発言をあらためて引用します。

地球温暖化は終わった。地球沸騰化時代が到来した。
躊躇はいらない、言い訳も不要。
誰かが先に動くのを待つのは、もうやめましょう
そんな時間はありません。

アントニオ・グテーレス国連事務総長発言(ニューヨーク、2023年7月27日) https://www.unic.or.jp/news_press/messages_speeches/sg/49287/


4省庁「環境省、消費者庁、農林水産省、厚生労働省」が並んで出展


消費者庁


環境省


千代田区


中野区


日本ホテル


芝パークホテル


ロイヤルホールディングス


JTB ロス旅缶


みどり産業


HAPPY EARTH


エドモンド岩崎総料理長はもったいないメニューの試食を提供


日本女子大学


パネルディスカッション mottECOの普及拡大について〜飲食事業者に期待する取り組み〜


mottECO FESTA グラフィックレコーディング 石塚計画デザイン事務所 千葉晋也氏

グラフィックレコーディング パネルディスカッション

記者の感想

mottECOフェスタ2024では、競合の外食・ホテル産業、縦割りと言われている4省庁が楽しそうに交流している姿が印象的で、考え方や、価値観が大きく変わってきていることを実感しました。外食産業は全体としては大きな産業ですが、小さな企業が集まっている業界だからこそ、このように垣根をこえた交流や、地域行政との連携がやりやすいのかもしれません。
区役所などゴミ処理を担当する地域の行政、そして農業、加工事業者、物流業界との連携が増えてくると、さらに大きな目標を達成できることでしょう!
環境にやさしい取り組みは、単なるコスト削減やCSRではなく、ビジネスの競争力や魅力にもつながります。消費者のニーズや社会の変化に対応して、外食産業が環境にやさしい未来を創ることができれば、私たちにとっても、地球にとっても、幸せなことだと思います。

取材・文:日本能率協会 みどりの食料システムEXPO企画委員 石川史子、写真:山根正充