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東京開催

会期2025年311日(火)~14日(金)10:00~17:00(最終日は16:30まで)

会場東京ビッグサイト MAP

堀ちゃん牧場の博多和牛は3世代、
家族経営がもたらす愛情たっぷり極上の味

(福岡市西区今宿・敬称略)

堀ちゃん牧場

堀田和秀(父)、堀田和央(長男)、堀田武志(三男)、堀田麻未(次女)

堀ちゃん牧場のオーナーである堀田和秀さん、和央(長男)さん、武志(三男)さん、麻未(次女)さんからお話を伺い、博多和牛の魅力や、牧場経営について取材しました。

福岡県の牧場で育てられた博多和牛*は、柔らかくてジューシーな肉質と、甘くて香り高い脂が特徴です。

*博多和牛は、堀ちゃん牧場の堀田和秀氏(父)が 地域の生産者と共にブランドを立ち上げ、2005年に商標登録が行われました。条件はA3等級以上で、福岡県で収穫した稲わらを食べ、登録生産農家で20カ月以上育った牛です。

この博多和牛を生産している堀ちゃん牧場は家族経営で、年間70頭の和牛一貫(子取り用のメス牛の飼養と肥育)生産者です。BSE、コロナ、少人数経営、円安、資材高騰など、様々な外部環境の変化に対応し、家族それぞれの専門性で事業の幅を徐々に広げ、地域に愛される持続可能な肉用牛の牧場経営を行っています。

堀ちゃん牧場は、地域生産者との協働による「博多和牛」のブランディングや、生産者自ら小売業・飲食業を経営し、事業多角化で付加価値を上げています。さらにデジタル技術で効率的に様々な仕事をこなして労働時間を削減し、地域に愛され、地域と共に稼ぐ農業を実践しています。

では、その具体的なビジネスモデルをご紹介しましょう。

1. 堀ちゃん牧場の特徴

1 家族経営の一貫体制(牛の生産から加工、卸売、小売まで)、博多和牛愛を伝える直営販売にこだわる
2 牧場から、飲食店販売まで、家族全員が知恵者、専門的なスキルで強いチームに
3 こだわりのエサは地域耕畜連携、糸島周辺地域(福岡市西区今宿)循環型農業の実現

2. 牧場経営を取り巻く状況

課題1:飼料価格の高騰
ウクライナ情勢に伴う穀物価格の上昇等により、配合飼料価格が上昇。畜産経営を圧迫しています。これまで穀物の輸出国であった中国が、穀物の輸入国に転じたことや、長引く円安も、穀物価格の上昇を引き起こしている要因の1つです。
肉用牛経営にとって、飼料の購入は必要不可欠です。飼料価格が上昇すれば、肉用牛経営を続けるためのコストが増加し、経営を圧迫してしまいます。

しかし、堀ちゃん牧場は牧場の立地条件が恵まれていました。それは、糸島地域が米の産地で、粗飼料の稲わらと麦藁が豊富に地域で調達できることです。
繁殖牛は、太らせる必要が無いので、とうもろこしを含む濃厚飼料の割合が低く、粗飼料割合*が多いことが特徴です。
麦藁はラップを巻いて、発酵させてから、牛に与えています。
糸島の農家にとって、麦藁は糸島の農家にとって、廃棄が困難でコストを要するため、麦藁を牛の飼料として利用できるのは革新的でした。
さらに、堀ちゃん牧場で作る完熟堆肥はニオイも無く、4トントラックで販売され、地域の生産者に喜ばれています。

*畜種別の経営と飼料 農林水産省 令和6年5月

課題2:外部環境変化への適応力
日本では農家の後継者不足を解決するために、農業の大規模化や法人化が国の政策として進みつつあります。農業の効率性や生産性が重視される一方で、家族農業は世界の農業経営の9割を占め、日本でも96.4%(2020年)*となっています。国際的には従来の家族による農業の価値も見直されつつあり、国連は2019年から2028年までを「家族農業の10年(UNDFF)」として定めました。

*出典:農林水産省「国連『家族農業の10年』(2019-2028)」より

堀田家の祖父の代は、福岡市内の七隈のあたりで牛や豚を飼う牧場を経営していました。約50年前、堀田和秀(父)が高校生のときに「牛一本に絞ろう」と決め、広い牧場の場所を探し、今宿へ移転したそうです。その後、堀田家は5人の子宝に恵まれ、家族で牧場経営を営んできましたが、2000年以降、厳しい外部環境の変化が続きました。

家族農業は付加価値を高めやすく、売上単価を上げやすいというメリットはあります。また、自然災害などを含め、外部環境の厳しい変化に対して人件費を抑制しやすいので、法人化した大規模畜産経営より適応力があるとも言えます。
堀ちゃん牧場は、最新のデジタル技術、補助金、地域支援を上手に活用し、持続可能な農業経営を行っている九州を代表する生産者なので、その具体的な方法をご紹介していきましょう。

A)BSE問題:2001年頃から、食肉の安全・安心に不安を覚える人たちが増えるなかで、「おいしい肉を、お客さんの手元に直接届けたい」と、精肉店、飲食店を開業。現在は元パティシエの麻未さんが店長として、食肉加工、販売を行う。
堀ちゃん牧場 今宿駅前店

B)コロナ:2020年5月から牧場直営通販サイトを開始。長男和央さんは地元不動産会社で営業経験があり、スキルや人脈を活かして販路を拡大。全国から注文が届く。
https://horichan.jp/gift

C)少人数効率化:2020年頃から、子取り用のメス牛の飼養を開始。まだまだ繁殖農家から勉強中という三男武志さんは今年70頭、13ヶ月で1回出産を目標にしている。4〜6月の期間は、10時から15時まで「わら」の収穫、田植え等の作業を行い、発情の見逃しがないようにメールで通知を受信。黒毛和種の生産性向上のため、ICTデバイスを活用した発情検知システム「牛歩」コムテックを導入、受精確率は8割程度。肉用子牛生産者補給金制度を活用。
https://nbafa.or.jp/work/subsidy.html

D)円安・資材高騰:2023年秋、米の生産を自ら行うと共に、地域耕畜連携で麦・米生産者約20戸の麦藁、稲藁を餌にして堆肥にして畑に戻す。野焼きではなく堆肥へ、地域の畜産農家と耕種農家が循環型農業で連携することで、農産物のおいしさと安全性、環境配慮型農業を実現。堀ちゃん米は今宿駅前店で販売。

3. 博多和牛のブランディングと美味しさへのこだわり

今回、生産者の堀田さん自らご自身で育てた牛で「焼きしゃぶ」を焼いてくれました。
博多和牛は、どの部位もおいしいですが、特にサーロインやロースは、脂の甘みと肉の旨みがバランスよく感じられます。博多和牛は、レアかミディアムレアくらいが最適で、口の中でとろけるような感覚が楽しめます。酢醤油や、塩がおすすめで、博多和牛の本来の味が堪能できます。

4. 堀ちゃん牧場へのアクセス

博多和牛の極上の味を堪能できる「堀ちゃん牧場 博多和牛専門店」は、福岡県の観光スポットとしても人気です。博多駅から、電車や車で約40分の場所にあります。

【堀ちゃん牧場概要】
〇博多和牛専門店 炭火焼肉 堀ちゃん牧場 本店
代表者:堀田 和秀
事業内容:飲食店 畜産 精肉加工・販売 稲作(ヒノヒカリ・夢つくし・もち米) 米販売 堆肥販売
所在地:〒819-0163 福岡市西区今宿上ノ原932-72
【TEL】092-836-5729
【FAX】092-836-5829
※本店は要予約となります。

〇堀ちゃん牧場今宿駅前店
精肉販売、ランチ営業など
所在地:〒819-0168 福岡市西区今宿駅前1-9-2
営業時間:10時~17時(ランチライム11時~14時半)
【TEL】092-836-5729
【FAX】092-836-5829

謝辞 今回、九州アグロイノベーション(九州みどりの食料システムEXPO)展示企画委員長 甲斐諭先生にご紹介いただき、堀ちゃん牧場を取材しました。この場をお借りして、厚く御礼申し上げます。
甲斐 諭 先生
学校法人中村学園 顧問、中村学園大学 前学長、九州大学名誉教授

記事:石川史子 写真:山根正允